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libbyy

やがてわたしたちは

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やがてわたしたちは

は、確かにアジア人にも、ポリネシア人にも、地中海沿岸の人間にも、また黒人にも似てい

なかったが、それでもどういうわけで人々がこの男のことを自分とはちがった外国人と見て

いるのか、そのわけだけはわかった。わたしなら、そのちがいを、この男に外国的な要素が

あるためと見るよりは、むしろ、この男が生物学的に退化しているためであると考えるのだ

が。
 このバスに乗る客が、わたしのほかには、一人もいないと知ったときにはなさけない気が

した。とにかくこの運転手と二人っきりで行くのかと思うと、嫌になったのである。が、し

かしいよいよ出発の時間が近づいたので、気分の悪さを抑えながらこの男のうしろから車に

乗り、一ドル紙幣を差し出して、「インスマウス」とたったひとこと呟《つぶや》いた。そ

の男は、口をきかずに四十セントのつり銭を返しながら、妙な顔をしてちらりとわたしを見

た。わたしは運転手から離れたうしろのほうの、しかし同じ側の席に腰をおろした。このバ

ス旅行のあいだじゅう、海岸のほうを眺めたいと思ったからだ。
 がたん、と一つ大きくゆれると、いよいよボロ自動車は動き出し、排気筒からもうもうた

る煙を吐きながら、煉瓦《れんが》造りの古い建物の並ぶ州道を、がたがた、とやかましい

音をたてて通り過ぎて行った。歩道を行く人たちのほうに、ちらりと目を向けてみると、そ

の連中は、妙にこのバスを見たくないような、いや少なくとも、見ているようすを見せたく

ないような素振りをしているのに気がついた。、左に曲って国道に出た

。すると、バスはすべるように走り出た。あの初期共和制時代の威厳のあるむかしの屋敷や

、それよりもむかしの植民地時代の農家の家並みをすばやく通りすぎ、ロウアー草原とパー

カー河とを通りすぎ、とうとうしまいに、長い単調な視界の開けた海岸地方へ入いって行っ

た。
 陽気は暖かく、お天気は上々だったが、砂上にスゲと伸びの悪い灌木の生えている風景は

、進むにつれてしだいしだいに荒涼としてきた。車窓からは、紺碧《こんぺき》の海とプラ

ム島の砂浜とが見えたが、インスマウスへ行く狭い道は、ロウレイやイプスウィッチ方面に

行く幹線国道からはわかれているので、まもなく車は、海岸のついそばの道を走った。家は

一軒も見当たらず、その道路の状態から判断して、このあたりでは、交通量はごく少ないこ

とがわたしにもわかった。風雨に曝《さら》された小さい電話用の柱に、電線はたった二本

しかついていなかった。ときどき車は、海水dermes 脫毛價錢の掘割にかかっている丸太橋を渡ったが、その

掘割は、内陸のほうにぐっと深く入いりこんでいて、この町を外部の世界から切り離す役目

を果たしていた。
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